2012年5月12日土曜日

【シナリオ】ゲームシナリオ四方山話 その1

ヨコオタロウの日記-4167801493.jpg

私たちが避けようのないものに文句をつけ、反抗してみたところで、避けようのないもの自体を変えることはできない。
だが、自分自身を変えることはできる。

/ デール・カーネギー



すっかりご無沙汰しております。ヨコオです。



飲み会で、別某大作RPGのシナリオ担当の方から「ニーアみたいなシナリオはどうやって作るんだ?」という質問を頂きました。「ニーアみたいなシナリオ」がどんなモノを指すのか判らなかったので、ちょっと伺ってみると

 ・ディレクターが周囲の意向を聞きすぎて方向が定まらない。
 ・大勢のスタッフの意思統一が出来ない。
 ・工数の問題で後からシーンを削られて意味不明になる。
 ・挑戦的な事は削られてしまう。

という問題があるとか。
飲み会の席でのお世辞だとは思いますが、まあ興味深い話題なので今日はこの問題について考えてみますです。

あとモテたい、という気持ちをサブリミナル的に挿入する実験をしてみます。



モテたい。



飲み会での話はシナリオの中身についてじゃなくて、シナリオ制作をとりまく政治的問題をどのように解決するか?という話だと思います。ニーアはなんというか少人数で同人誌みたいな作り方をしたゲームなので大作とは違うと思いますが、ゲームシナリオ制作で発生しがちな問題の解決方法を考えてみます。

まずは
「ディレクターが周囲の意向を聞きすぎて方向が定まらない」
という点について。

あるあるよくある。よく聞きます。
まっとうな「大人」はちゃんと人の話を聞きます。優しいですが、相手も自分も傷つきたくない、という処世術でもあります。でもまあ、ワガママを通せばなんとかなるのか?といわれればそういう訳でもありません。モテたい。大変難しい。

シナリオライターさんにも同じ事が言えます。「イマイチだな」と思っていてもお金もらってるし上司には逆らえない。外部のライターさんだとなおさらです。

つまり「マトモで優しい大人が沢山集まると、周囲の意向を聞きすぎて混乱する」という現実があるわけです。



まずは「周囲の意向」とは何なのか?を精査します。
プロジェクト運営している時のメンバーのリクエストは大体こんな感じです。

プロデューサー → プロジェクトメンバーが問題を報告して欲しい。
ディレクター → プロデューサーにもっと人間をアサインして欲しい。
プランナー → デザイナーから自発的に提案して欲しい。
デザイナー → プランナーに仕様書を書いてもらいたい。
プログラマー → ディレクターに方針を決めて欲しい。

スムーズに行ってるプロジェクトはいいんですが、そうでないプロジェクトは大体こんな感じでしょう。モテたい。上記を見れば判るんですが、全部「他者への要求」なんですね。



で、まあどうするかと言う事なんですが。

上記の「他者に要求を通す」というのは、その内容の正しい・正しくないに拘わらず大きなコスト(お金・精神力)がかかります。簡単にできるなら、そんな不満は出てきていない筈ですから。

そういう時には僕はなるべく「自己の欲求」に変換してもらうようにしています。

たとえば、
シナリオライターなら「どんな話を書きたいのか?」とか。
デザイナーなら「どんな画を作りたいのか?」とか。モテたい。
プログラマーなら「どんなアクションを作りたいのか?」とか。

つまり「アナタは何をしたいんですか?」という事です。
こっちの方は、自分のやりたい事はやれる範囲の事しか言いませんから、非常に小さいコストのケースが多いんですね。



で、そうした「自己の欲求」を集めるとその数は意外に少ないんですよ。これが。深く掘り下げると「そんなに自分でやりたい事無い」って人も沢山居ます。
そのくらいの数の願いなら、叶える事も出来ます(無理なリクエストもあるんですが)。

てなわけで「周囲の意向を聞きすぎて方向が定まらない。」というディレクターさんが居るチームは

 ・メンバーに「他者への欲求」「自己の欲求」を切り分けて貰う。
 ・「自己の欲求」をなるべく叶える。モテたい。

という形でまずは「周囲の意向」の内容を整理する必用がある気がします。



各メンバーの「自己の欲求」を叶えた後は「他者への欲求」が残る訳です。
たとえばプロジェクト無いでAさんとBさんが憎み合ってて、お互いを「アイツをクビにしろ」って言ってるようなケース。

これは大変面倒な話なんですが、放置していていいものでも無いのでなんらかの手を打たないといけません。

と、ここまで書いて長くなったのでまた次回以降に。



あと、「モテたい」とサブリミっても読みづらい上にモテない気がしてきたので次回からはやめます。モテたい。


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